田辺と野村
俺には変わった不思議な友だちがいる。
名を野村という。
いつも奴からの呼び出しは電話。
「田辺〜ちょっと来いよ。」と、いつものごとく言われ、まぁ結構俺は奴のことは嫌いじゃないし、仕事ももう一段落してたから、チャリを走らせた。
「おぅ!田辺来たか。わりぃな。」
「今日はなんだよ。」
「フルーツミックスってさ、どんなんだったっけ?」
「はぁ?」
いつも奴はおかしいが、今日はいつもに増して何言ってんだか分からない。
なので、聞いてみた。
「ジュースか?」
「ちげーよ!昔さぁ〜こう輪になって、体育座りして、一人が鬼?みたいにして、みんなの輪をぐるぐる回ってなんかやるやつあったよね?」
「ハンカチ落としか?」
「いや、ハンカチ持ってないバージョン。」
「椅子取りゲームか?」
「いや、椅子に座らないバージョン。」
「いくつもバージョンあんのかよ?」
「だから、フルーツミックスだっつーの!」
「それ、言うなら、フルーツバスケットじゃねーか?」
「あぁ!お前やるな〜田辺。やっぱお前はすげぇな、やっぱ俺が認めてるだけあるわ。フルーツバスケットだわ。」
「それがどうしたんだよ?」
「いやさ〜フルーツバスケットやりてぇって思ってさ、どんなゲームが再現したくなったんだよ。ガキの頃みたいにさ。全然思い出せねぇんだよ。」
「野村さ、俺呼び出してもさ、二人じゃ出来ねぇわ。輪になってやるんだろ?」
「!!!そうだな。お前、その通りだな。ぶぁっはっはっ。」
そう野村は言って笑い終えると、すくっと立ち上がりこう言った。
「・・・・・・呼び出して悪かったな。じゃっ、俺帰るわ。」
帰るんか!野村、帰るんか!野村ァ!
俺は呼び止めずにはいられなかった。
「ちょ、待てよ。フルーツミックスジュースおごるわ。コンビニ行こうぜ。」
「おぉ!気が効くな、さすが田辺だぜ。フルーツバスケットじゃねーバージョンな。ぶぁっはっはっ。」
「よくわかんねーけど、俺がおごる理由もよくわかんねーけど、まぁいいわ。行こうぜ。」
「行こうぜ。ぶあっはっは。」
深夜、俺たちは、フルーツバスケットについて語りながら、フルーツミックスジュースを飲んだ。
夜の闇に野村の笑い声だけが響く。
俺には変わった不思議な友だちがいる。
名を野村という。