「あなたを想い出す時、そこにはいつもパンがある。」
あなたはもう私の前から居なくなった。
「私の前から」は、だ。
厳密に言うなれば、
「私【だけ】の前から居なくなった」
もっと分かりやすく言うなれば、
私は失恋した。
恋を失ったのだ。
いやいや、恋はきっと失っちゃいない、、
と思うのだが。
失恋とはどういうことかググってみた。
「相手が自分を思ってくれず、恋をあきらめなければならない状態になること」
だそうだ。
状態なのか。。。あきらめなければならないのか。そんな状態なのか。失恋ってやつは。
まてよ、恋をあきらめなければならない、とあったが、恋とはなんだ?
ーーーググってみた。
「異性に愛情を寄せること、その心。恋愛。」
ちょっとまった!恋愛とはなんだ?
ーーーググってみた。
「男女間の恋い、慕う感情。こい」
恋と恋愛との違いはなんだ?
ーーーググってみた。
王子経営研究会ブログによると、、
恋とは恋愛との違いは、ざっくりいうと
恋は一方通行、恋愛は双方の想いが確認できたとき始まるものとされている!!!!
やがて恋愛から、恋がとれて、愛になる。
面白くて、ちょっとプププってなって、わかりやすかったから、添付。
さてはて、
私はようやく恋が恋愛にまでいったが、その手前で失恋した、ということなのか。
まぁいい、失恋した、私は失恋したことを認めようではないか。
要するに私は振られたのだから。
彼が私の前から居なくなっても、私の前にはパンがある。
彼と私はよく、焼きたての食パンを、焼き上がりの時間に合わせて、買いに行った。
パン屋の名前は「フルーツみっくす」。
幸せだった。
一斤も買うがやわらかすぎて包丁は入れられない。焼きたてホカホカ。
だから、手でちぎって食べるのだ。交互に、または同時に。その食パンに合わせて、準備していた、楽しみにしていたいくつかの旬のジャムをつけて。ジャムと食パンもまた恋人同士のようだね。お互い待っていてようやく会える♥
私たちは塩も好きだったから、いろんな種類の塩もつけて食べる。甘いのとしょっぱいのを交互に食べる。これもまた恋のようだ。
サンドイッチ風におおきめにちぎった食パンにちぎったレタスとちぎったスライスチーズをはさんだりしても楽しむ。コーンポタージュにひたしたりもして味わう。いろんなスープで。これは合うね〜。合わないね〜みたいに。楽しんだり、味わったりして、これも恋のようだ。恋の醍醐味。
あなたは珈琲を淹れてくれて、私は「フルーツみっくす」でフルーツミックスジュースを買う。
彼が居なくなってからは、こうして食パンを食べていない。あなたが淹れてくれることはなくなったから、珈琲も飲んでない。フルーツミックスジュースも飲んでいない。
いつか食パンを見てもなんとも思わなくなる日が来るのだろうか。
今はこの哀しさにひたっていよう。
哀しいけれど、私は食べ物を美味しいと感じることができる余裕はある。
哀しいのに美味しい。美味しいけど哀しい。
私は食べ物の味わいや恋の味わいは忘れてはいない。
彼を失ったからといって、私はわたしを失ってはいない。
私は生きている。
彼は居なくなった。
でも彼もどこかで、きっと楽しく生きている。
それが私の知らない所だということが残念で無念でならないが仕方ない。
私は私の持ち場で楽しく生きようではないか。
そして、パンはある。
世の中からパンは無くなっていない。
素晴らしきかなこの世界。
二人の未来の想い出は作れなくなったとしても、未来のパンはある。
私にはパンと想い出がある。
私は幸せだった。
きっとこれからも幸せになれる、もっと幸せになれると信じて、私は今日、久しぶりに、
あの食パンを買いに行こうと思う。
新たなパンと、私、との想い出を作る。
たまには想い出すのだろう。
私と彼とパンと恋。
さようなら、あのときのパンと君と私の恋。
こんにちは、これからのパンと未来の誰かと私の新たな恋。
春よこいっ。
おわり。